保育士さんも、いきいき変わる「絵を聴く保育」

『子どもの絵を聴くって気になるけど、どういうこと?』とよく聞かれます。大人の常識では絵は見るものです。しかし、子どもの絵は見るだけでない特徴があります。描く時に対話しながら絵のお話を聴くことで、子どもをより理解でき、信頼関係を深めることが出来ます。子どもは、聴いて欲しいのです。聴いてもらえると嬉しくて、もっともっと描きたくなり、絵がいきいき変わります。同時に、聴く側の保育士さんやお母さんたちもいきいき変わることがわかってきました。

1.なんで絵なの?
2.どうやって聴くの?
3.どうしていきいき変わるの?

この3つについて簡単に説明します。

1.なんで絵なの?
子どもの絵には子どものすべてがあらわれます。絵は発達と思いを伝える表現手段であり、コミュケーション手段なのです。 1歳前後に、鉛筆やマーカーを描く道具として認識する瞬間『はじめてのお絵描き』が訪れます。その時の腕の動きは『・・(点々)』上下運動です。決してアンパマンから描き始める子どもはいません。
絵には発達の道筋があり、発達の道筋はとばせないのです。だから、点々を上下運動で描いている絵を見たら、1歳前後の絵だと分かるということです。
同様に、元気にグルグル丸を描いていたら、満2歳くらいの発達で、自我が芽生えて探索活動(ウロウロと動き回る)して、いやだいやだと自己主張している姿が見えてきます。
しかし、線に勢いがなかったり、いがいがと角ばっていたり、すみっこのほうにちょこんと描くだけだったり、塗り潰しが多かったりすると、運動面や精神面で何かあるのかな?と推測できるのです。
ぐるぐる丸は絵の笑顔
 ぬり潰しは絵の泣き顔
と、いわれています。
絵からの情報で、心と身体の発達と状態が読み解けます。子どもにとって、絵はとても優秀な表現手段なのです。

2.どうやって聴くの?
絵にすべてがあらわれたとしても、0〜3歳頃の子どもたちは点や丸や線で、何が描かれているかわからないない絵を描きます。(点鋲画、なぐりがき)だからこそ、対話して聴くことが大切です。子どもの絵は『おはなし』なのですから、

✅そうだよね…共感
✅すごいね…褒める
✅これは何?…会話を広げる

と、普段の対話と同じ聴き方をするだけです。
言葉が出始める1歳から2歳の時期は、ぐるぐる丸に『おいも!』などとお名前をつけるようになります。(見立て活動)
3歳くらいになると『これはだれかな?』(会話をひろげる👶『あいちゃん!』
👩『そうかあいちゃんなの!(共感)かわいいね!(褒める)保育園で遊んでるの?(会話をひろげる)』
👶『ちがう、こーえん(公園)ボールこれ!』
👩『公園であいちゃんとサッカーしたよね(共感)』
👶『うん!』
 サッカーボールと自分を描き始める…というように、お話をしながら絵が仕上がっていきます。

3.どうしていきいき変わるの?
絵を聴く描画活動は、時々ではなく日常的に行われることで、描くことが楽しくなります。子どもはいつもいつも、毎日でも思いを聴いてもらいたいのです。
その思いを大好きな人に笑顔で聴いてもらって表現が絵として可視化されて褒められるのですから、もっともっとと意欲的になります。絵には積極的に生きているエネルギーがあふれています。
聴く側は、お話をしていく中で子どもをより理解でき、認識できます。『こんなこと思ってたのか』『楽しい遊びが心に残ってたんだ』『私を描いてくれた…』もっと楽しいこと考えよう!と保育をデザインする力にもなっていきます。
この感覚は、雨の日にやることないから絵でも描いていれば静かだとか、製作しないといけないからしょうがなく描かせるとか、自分が絵が苦手なんだから子どもにうまく描かせるのは無理だとか、ネガティブなお絵描きからは湧いてこないでしょう。
子どもも保育士も絵での対話を含む表現活動、日常的なコミュニケーションで、信頼関係を築くことができます。それが、いきいきとした生活と遊びに結びついていきます。お互いの見方や捉え方のヒントが描く活動には含まれているということです。
その結果がまた、子どもの絵によって表現されていきます。

ある50代の経験の浅い臨時保育士さんは、昨年6月に絵の講座でお会いした時、描く時間を作ることすら難しいと言って涙を見せていました。
しかし、子どもたちの話を聴いて描く対話式描画活動が楽しくなってきたことをきっかけに、保育園に行って子どもたちに会いたい、絵を聴きたいと保育自体も楽しくなったそうです。
その結果、10月、11月の勉強会でどんどん子どもたちの絵はお話がいっぱいに変わっていくのが分かり、私は保育が子ども主体に変わっていることを褒めました。
今年2月にお会いした時、2歳児クラスの全員の絵はいきいきと変わり、相方の担任の保育士さんまで顔が明るく笑顔に変わっていました。
6月ごろは、子どもたちも落ち着かず、仕事が大変すぎて、給料が安いし、休みが少ない、責任は思い、待遇の悪さばかり気になっていたそうです。つまり仕事に対してマイナスな気持ちだったのに、
『今は保育が楽しい。子どもがかわいいと心から思えるようになりました。保育士だって褒められたい、認められたい気持ちが絵を聴く保育と出会って、もも先生に絵を褒められて満たされました』と言っていました。

年齢でも、経験でも、才能でもなく、行動するかしないかで、自分も変えられる。自分が変われば周りが変わっていく。

この簡単な方法を知って欲しいのです。子どもも保育士さんも豊かな描画活動を通して、質の高い生活や遊びが繰り広げられ、自己肯定感が高められていくのです。
私ってすごい!って思えるからいきいき生きられる。
保育士って最強だと感じています。

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