お芋掘りの絵は、「聴く」ことで変わる

子どもたちに「芋掘りの絵を描こうか」とことばがけをしたとき、手が止まってしまったり、「どう描けばいいかわからない」と困っていたりする姿を見たことはありませんか?

実は、子どもが夢中になって絵を描き始める本当のカギは、「上手な描き方を教えること」ではなく、「体験を語り合い、子どもの絵を聴くこと」にあります。

この記事では、土居桃子(もも先生)の実践に基づく「絵を聴く保育」の視点から、年齢ごとの発達に応じた芋掘りの絵のアプローチ法をご紹介します。

この記事でわかること

  • 「食育」から「描育」への連動プロセスを理解し、体験を表現へつなげる導入ができる
  • 1歳から5歳までの発達段階に応じた画材選びと対話法を実践できる
  • 子どもの「描かされる」気持ちを「描きたくてたまらない!」という主体的な意欲に変える関わり方ができる
  • 共同画を取り入れた、友だち同士が響き合う表現活動を展開できる

体験から描画へ:食育と「絵を聴く」対話の力

芋掘りは、子どもたちにとって単なる一日の行事ではありません。畑を耕し、つるを植え、日々大きくなる様子を観察し、収穫して焼き芋をつくり、食べる——という豊かな一連の生活の流れ(物語)が存在します。

特に1〜2歳の幼い子どもたちにとって、「食べる」体験は心に強い印象を残す最高のインプットです。掘ったばかりのお芋をその場で洗い、包丁で切るところを見せ、ホットプレートで焼いて塩をパラパラっと振って食べる。この「おいしい!」という五感の記憶が、活動を子どもたちの心に「グッと」落とし込みます。これが「食育」から「描育」への架け橋となります。

そして、絵を描く前に最も大切なのが「聴くこと(対話)」です。大人から「描きなさい」と指示するのではなく、「今日のお芋掘り、どうだった?」「誰と掘ったかな?」と問いかけてみましょう。

  • 1〜2歳:子どもの描いたなぐりがきを「てんてん何かな?お芋かな?」と見立てる
  • 3歳くらいまで:保育者と子どもとの1対1の対話で、じっくり思いを引き出す
  • 4歳・5歳:みんなで一斉に振り返り、「どんなことがあった?」と集団で対話しながらイメージを広げる

対話によって心の中にイメージして、先生と描くと「おもしろい」「描きたい!」という想いが自然と溢れ出してくるのです。


発達段階でこんなに違う!1歳〜5歳の年齢別アプローチ

絵の表現力は、子どもの発達とともに大きく変化します。年齢に合わない画材や指導を行うと子どもの意欲を削いでしまうため、各年齢の特性を理解することが重要です。

1〜2歳児:1対1の対話で、単語を「物語」に

1〜2歳児の描画は、丸やぐるぐる丸、線や点が中心です。ここで保育者が「パックン、先生がお芋食べちゃうぞ」「〇〇ちゃんも食べた?」と対話しながら絵を「聴く」ことで、ただの丸が「お芋」になり、「お友だち」になります。単語が「出来事」になり、体験したことが絵にあらわれて「物語」に変わることで、「伝える喜び」が育まれます。

※隣や横に寄り添う、1対1での関わりが基本です。

3歳児:頭足人と宇宙遊泳のような世界

3歳頃になると、顔から手足が生えた「頭足人(とうそくじん)」が現れ始めます。画材は四つ切りの用紙に水性マーカー(一色)が最適です。上下の感覚はまだ曖昧で、紙の上で向かい合わせにお芋や自分を描く「宇宙遊泳」のような共同画も楽しめます。

4歳児:胴体の出現と誇張表現の面白さ

4歳では胴体が描けるようになります。しかし、「人より巨大なお芋」や「人間より大きなミミズ」を描くなど、大小関係の理解はまだこれからです。これは欠点ではなく、印象に残ったものを大きく描く4歳ならではの素晴らしい表現です。

土と空を描いた背景に、別紙に描いた人物やお芋を切って貼る「切り貼り表現」も、作品としてまとめやすくおすすめです。

5歳児:響き合いを生む共同画と墨汁線描

5歳では、模造紙にみんなでお芋や人、景色を描いて色を塗る「共同画」や、四つ切り紙に墨汁で描く力強い線描画が真価を発揮します。友だち同士で「ここ描こうよ!」と刺激し合うことで、描くのが苦手だった子も自然と引き込まれ、表現の楽しさを発見していきます。

5歳児:油性マーカー線描画に固形絵の具での表現

5歳で基底線表現も現れてきた子どもさんは、体験画を豊かに描き始めます。マッキーツインマーカーなどを使って、芋掘りの様子を描き、友だちや芋を掘った様子を描くことができるようになります。その後、絵の具で彩色することもできるようになっていきます。

5歳児ならではの、固形絵の具での色彩表現については違うブログでお伝えします。また、5歳の絵の具マスター講座も定期開催しています。公式LINEでお知らせするので、登録してお待ちください。

年齢別アプローチまとめ

「描かせる」から「描きたくなる」へ:意欲を引き出す工夫

子どもが「絵を描くのが嫌」「描けない」と感じてしまう最大の理由は、「きれいに描かされている」と感じるプレッシャーにあります。保育者の役割は、上手に描かせることではなく、「嫌い・描けない」という気持ちを「描きたい!」に変える環境とアプローチを整えることです。

描く意欲を最大化するための4つのポイントを押さえましょう。

1. 心ゆさぶる導入と体験

豊かな生活と、仲間と心弾む体験なくしては、豊かな描画活動は現れてきません。ただ「描きましょう」ではなく、焼き芋のにおいや味、ミミズが出てきた驚きなど、感情が動く体験が必要です。

2. イメージを広げる対話

「どこが一番楽しかった?」「だれと掘ったの?」と問いかけ、子ども自身の言葉でイメージを膨らませます。

3. 発達に合わせた魅力的な画材

マーカーの滑らかな描き心地や、絵の具、たんぽ筆、墨汁の濃密な黒など、子どもが触ってワクワクする画材を用意します。

4. 「伝える喜び」を実感できる飾る工夫

完成した作品や共同画を廊下やホールに掲示しましょう。保護者や他クラスの先生、友だちから「わー、すごいね!」と言ってもらう体験が、子どもの自己肯定感と次への意欲(「また描きたい!」)を大きく育みます。

まとめ

芋掘りの絵指導の本質は、形をうまく描かせることではなく、五感を通じた体験と「絵を聴く」対話を通じて、子ども自身の中にある「伝えたい!描きたい!」という主体的な思いを溢れさせることにあります。年齢ごとの発達段階に応じた画材や対話の工夫を取り入れることで、子ども一人ひとりの伸びやかな表現が開花します。

  • 体験と食育の連動:低年齢児ほど「掘ってすぐ食べる」五感体験が、描画への強いモチベーションとなる
  • 「描く前に聴く」対話:子どもが描いた点や丸を「出来事」や「物語」へと意味づけ、伝える喜びを育む
  • 年齢に応じた発達配慮:1〜2歳(1対1の命名・対話)、3歳(頭足人・マーカー1色)、4歳(誇張表現・切り貼り)、5歳(共同画・墨汁線描・油性マーカー線描と絵の具)と段階的に関わる
  • 「描きたくなる」アプローチ:魅力的な導入・画材・友だちとの響き合い・承認される体験が「嫌い」を「描きたい」へ変える

先生も一緒に、楽しんでみてくださいね!

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4歳のさつまいもの絵 どう描く?

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